「ZOLLに呼び止められた日 ― ドイツの厳しさを知る」
ドイツには「Zollamt(ツォルアムト)」という組織がある。
これは日本でいう税関にあたるが、その役割は単なる輸出入のチェックにとどまらない。
ドイツの Zollamt は、関税・消費税の徴収だけでなく、労働や社会保障の監視まで行う。
密輸や脱税の取り締まりはもちろん、不法就労や賃金未払いといった分野まで踏み込む。
つまり、国家の“経済の番人”といった存在だ。
そんなある日、私の知る委託業者さんが、この Zoll の職員に呼び止められた。
ふとした立ち話のような職質だったらしいが、
そこで「仕事の内容」や「取引先」について詳しく聞かれたという。
彼は個人事業主として登録しており、私たちの会社から多くの仕事を受けていた。
Zoll の調査でその取引が相当な量であることがわかると、
「これは実質的に社員ではないのか?
会社は彼を雇用し、社会保障を支払うべきでは?」
と、かなり強く指摘されたそうだ。
結果的に、会社側には社会保障費の追徴が発生。
かなりの金額になった。
彼自身も個人事業主として支払っていた保険料は多くなかったようで、
そこにも再計算が入り、修正を求められたという。
正直、最初に話を聞いたときは「そこまで細かく見るのか」と思った。
けれど、それがドイツのやり方だ。
「制度の公平性を守る」ためには、誰であろうと徹底的に調べる。
その監督の厳しさ、管理の度合いは、日本とはまるで違う。
当事者にとっては嫌な経験だっただろうし、私も少し嫌な気持ちになった。
けれど同時に、「社会保障とは何か」を考えさせられる出来事でもあった。
恐るべし、ドイツのZOLL。
しかし、これを機に改めて思った。
社会保障については、きちんとしよう。


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