不安をあおる情報社会の行方

ヒトコト

いまの日本は、まさに「不安情報社会」のただ中にある。
不安情報社会とは、社会にあふれる情報の多くが人々の不安や恐れを刺激し、それによって注目や利益が生まれる構造のことだ。情報が増えるほど安心ではなく不安が増える——そんな逆説的な時代に、私たちは生きている。

その象徴がマスメディアの報道姿勢だろう。視聴率を上げるために、不安をかき立てるようなトピックや言い回しが日常的に使われている。天気予報を見ればそれは如実にわかる。少し寒くなるだけで「厳しい冷え込み」、昨日よりわずかに暑いだけで「猛暑」「熱中症警戒」と繰り返される。普通の気候や平凡な一日にも、あえて「不安」や「危機」の要素を探し出し、強調して伝える。結果として視聴率が伸び、スポンサーも満足する。そうした成果指標(KPI)が、メディアの現場を無言のうちに支配している。

背景には、資本主義の構造がある。企業はスポンサーの期待に応え、スポンサーは資本家の利益を優先する。サラリーマン社会の日本では、その流れに抗うことが難しい。上の顔色をうかがい、数字を優先し、安心よりも不安を売る。その循環の中で、私たちは「何のために働くのか」「社会にどう役立ちたいのか」「未来に何を残したいのか」という根本的な問いを見失っている。

今こそ問うべきだ。
本当にこの情報の流れに身を委ねてよいのか。
不安を広げる側にいるのか、それとも安心をつくる側に立つのか。

現状に満足してはいけない。
「今の場所から動け」——その言葉は、メディアだけでなく、私たち一人ひとりに向けられている。

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