はじめに
今の資本主義では、「今」をどう生きるかよりも、「未来をどう語るか」が大切になっている。
会社の価値は、実際の業績よりも「将来どうなりそうか」で決まる。
株や仮想通貨を見ればわかるように、人々は“未来への期待”をお金で買っているのだ。
1. 未来を描くことが仕事になる
企業の上の立場にいる人たちは、もはや現場の細かい問題を解決することよりも、
「未来をどう描いて投資家を動かすか」に力を注いでいる。
新しいビジョン、変革、AI、グローバル戦略――。
そういった言葉で未来を語ることが、株価を上げ、資産価値を高める手段になっている。
つまり今の経営者の仕事は、「会社を良くすること」よりも、
「資本家をもうけさせる物語をつくること」になっている。
2. 「変革」がいつも求められる理由
だから、どの会社でも「変える」「進化する」「挑戦する」といった言葉が飛び交う。
それが“未来を描いているサイン”になるからだ。
けれども、その変革が本当に現場を良くしているかというと、そうでもない。
投資家を意識した改革ほど、現場の実情から離れていく。
結果、社員の負担が増え、混乱が起きる。
そして気づけば、「誰のための改革なのか」がわからなくなっている。
多くの企業の失敗例を見れば、この構図は明らかだ。
3. 投資家しか見ていない経営
今の企業は、顧客よりも、社員よりも、まず「株主の目」を気にする。
株価が上がれば成功、下がれば失敗。
そんな短期的な評価軸に追われて、経営の視点がどんどん歪んでいく。
現場で働く人たちは「人」として見られず、
コストや数字として扱われる。
経営層が未来を語るほど、現場は疲れ、距離が広がっていく。
4. 本当に変えるべきもの
この構造そのものが、現代資本主義の根本的な問題だ。
みんなが「変える」「改革する」と言うけれど、
それも結局は資本主義の中での“ビジネスの一部”になっている。
つまり、「変えること」自体がまた新しい投資のチャンスになり、
市場を動かす材料にされてしまう。
だから、どれだけ会社を変えても、根本は変わらない。
変えるべきは、資本主義という仕組みそのもの――。
でもそれがいちばん難しい。
私たちはそのことを分かっていながら、
今日もまた「改革」という言葉を使い続けている。
おわりに
未来を描くことが価値になる社会。
けれど、その未来を信じて働く人たちは、しばしば置き去りにされる。
現代の企業が抱える混乱や疲弊は、
経営のミスではなく、資本主義という構造の必然なのかもしれない。
変わらない資本主義の中で、
私たちは「変革」を繰り返すループに生きている。
そして、そのループを本当に抜け出すには、
資本主義の外側を想像する勇気がいる。
それが今、もっとも“実現しにくい未来”なのかもしれない。


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