DE012:一時滞在用ホテル

ドイツ編

ドイツに来たばかりの頃、家が決まるまでの一時滞在として、狭いホテルに一か月ほど宿泊していた。言葉も文化もまだ馴染みがなく、極度の人見知りな自分にとって、外食は高い壁だった。代わりに、スーパーのアジアフードコーナーで乾燥麺や日清の袋ラーメンを買い、ホテルの簡易コンロで調理する日々。最初は懐かしさもあったが、やがて味にも飽きがきた。とはいえ、ビールが安かったのは救いだった。

ホテルのサービスは、タオルの交換があったりなかったりと、程よくいい加減で、それが逆に心地よかった。単身赴任という状況の中、日本に残してきた家族のことを思いながら過ごす毎晩は、思った以上に堪えた。これから何が起こるのか、期待と不安が交錯する。特に最初の頃の不安と心細さは、今振り返っても何物にも代えがたい経験だった。ここでどう踏ん張るかが、今後の駐在生活を占ううえで重要だったのかもしれない。

やがて家が決まり、入居できる段階になったときは、心が晴れ渡るような気持ちだった。ホテルを離れるときには、少し寂しさもあった。そんな中、退去日をめぐってちょっとした勘違いもあった。滞在期限が「BIS 6月20日」と書かれていたので、20日までは滞在可能、つまり20日の夜までいてもよい=チェックアウトは21日、と前向きに解釈していた。しかし実際には、20日がチェックアウト日であり、延長するなら事前に申し出るべきだったと、後から注意を受けた。

この経験から学んだのは、言語のニュアンスの違いだ。よく「OUT OF OFFICE UNTIL 20th June」と書かれているが、直訳すれば「20日まで不在」。しかし英語では、20日になったらオフィスに戻るという意味になる。つまり、19日の23:59まで不在の状態が続き、20日の0:00からその状況が終わるということだ。こうした細かな言語の感覚が、異国での生活においては思いのほか大きな意味を持つ。

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