ドイツに着いたのは、5月の半ば。春というより、初夏に近いはずなんだけど、思ったより肌寒かった。
でも、その空気がなんだか新鮮で、胸いっぱいに吸い込みたくなるような澄んだ匂いがした。
まず驚いたのは、空の青さ。
いや、本当に、やけに青かった。どこまでも広がっていて、しかも少しも濁っていない。
日本の空とは明らかに違う感じがして、「ああ、外国に来たんだなぁ」としみじみ実感した瞬間だった。
街の景色もどこか明るくて、木々の緑がやさしい色をしていた。
自然が“わーっ”と主張する感じじゃなくて、控えめだけどちゃんとそこにいる。そんな雰囲気。
車窓から見る街並みは静かで、でも殺風景じゃない。不思議な落ち着きがある。
人は少なめ。歩いている人たちも、なんとなく距離を保ちながらそれぞれのペースで歩いている。
それが、ちょうどいい。誰かとぶつかることも、気を使いすぎることもない。
この「ちょうどよさ」は、日本ではなかなか味わえないかもなぁ、と思った。
それから気づいたのは、電線がないこと。
街の上にぐちゃっと張り巡らされた黒い線が見当たらない。看板もない。
そのぶん空が広く見えて、建物がちゃんと「景色の一部」になっている。
見渡す限り、すっきりしてるけど、味気ないわけじゃない。
必要なものだけを、ちゃんと置いている感じ。
「シンプル・イズ・ベスト」って、こういうことかもしれないなと思った。
もちろん、ちょっとした不安もあった。
言葉も文化も違うし、これからの生活のことを思うと、正直ドキドキする。
でも、この静かで落ち着いた空気に包まれていると、「なんとかなるかも」って少し思えた。
肩の力が、すっと抜けた気がした。
ドイツの第一印象は、静かで、広くて、どこかやさしい国。
派手な歓迎なんてないけど、そのかわりに「ちゃんと見てるよ」「ここにいていいんだよ」って
静かに言われてるような、そんなあたたかさを感じた。
きっとこの国で、私はいろんなものを見て、いろんなことを考えるんだろうな。
そんなことを思いながら、青い空を見上げた。
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