大学を卒業して、就職ではなくフリーターという道を選んだ。理由は一つ——海外に行って、もう一度学び直したいという夢があったから。だけど、その夢に向かう日々は決して華やかなものではなかった。
朝は早く、夜は遅く、アルバイトで体を動かしながら、空いた時間に語学の勉強。貯金のペースは思ったよりも遅くて、思い描いていた計画は、気づけばどんどん現実にすり減らされていった。
まわりの友人たちは、次々と企業に就職し、名刺を持って、ネクタイを締めて、それなりの社会人になっていく。連絡は徐々に減り、電話をかけるのも少し気が引けるようになって、「今さら何を話せばいいんだろう」なんて考えてしまったり。
手紙を書くには重すぎる本音。会うには遠すぎる距離。
そんな中で、自分の選んだ道が正しいのかどうか、答えのない問いを毎晩、心の中で繰り返していた。
テレビの中の世界はどこか遠くて、新聞の見出しは今の自分とは関係なくて、何も手応えのない毎日が、ただ流れていく。夢はあったけれど、自信はなかった。未来は信じていたけれど、今は怖かった。
言葉にしようとすればするほど、うまく表せない。
あの頃の気持ちは、やっぱり「形容しがたい」としか言いようがない。
けれど今、少しずつ夢が現実に近づいてきて、あの不安だらけの時間にも、確かに意味があったのだと思える。
誰にも見えなかったけれど、自分だけが信じた道を、あのときの自分が歩いてくれていたんだと思う。
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